ラスト




感情を感じさせない説明は、冷やかさを感じさせた。
会ったばかりの長門有希でもここまで冷たさは感じなかった。
いや、彼から出た言葉だから。
いつも自分にはつれない、でもどこか彼の言葉には温かみがあったのに。
今はもう何もない。
だからこそ、いっそう冷たく響いた。

それが僕の感情を逆なでした。

「何とも…思わないと。そう言うんですか!?
 あなたにとって涼宮さんや、長門さんや朝比奈さんや、僕、は…SOS団はその程度の存在なんですか!?」

普段の自分らしからぬ声、だと思った。
しかしその声は見慣れた彼の表情を引き出した。

「違う!」

 

はっ


だけどその変化も一瞬で。
でも、さっきよりまだ困った顔を残して小さく彼はつぶやいた。



「なんとも思ってないってんなら、こんな説明してねーよ。」

 

「……。」

 

彼の声は少しだけ僕の頭を冷やした。

 

「…すみません、つい…。」

「気にすんな。普通の反応…だろ。」

そう言って仄かな笑みを浮かべた。

今までもよく見た笑顔…でも、向けられたのは始めてな気がする。

少なからず胸が冷える。

でも、今は感情に振り回されている場合じゃない。
まだ聞かなければいけないことがある。

…だが、時間は無情だった。

「…悪い、古泉。タイムリミットだ。」

「!」

「ありがとな。」

何に対しての礼なのか、わからなかった。
それが最後の言葉で。

言い終わると

 

彼の体はかくりと

 

 

くず おれ て

 

 

「……!!」

一度も呼んだことのなかった、もう消えてしまった名前が喉の奥で消えた。

でも、辛うじて腕は届いた。

 

倒れかかる体をなんとか抱き寄せた。

「…あ…。」

今動いていた体だとは思えないほどに

つめたい ひえたからだ

 

 

嘘だ。
つい1時間前まで、何も変わらない日常だった。

 

こんなの、嘘だ。

明日になれば夢になる。

夢にしてくれ。

誰でもいい。涼宮さんでも長門さんでも朝比奈さんでも、見たことのない神様でもなんでもいい。

こんな現実、変えてしまってくれ。

 

「…君………く、ん…。」
冷たい体を抱きしめた。
こんな近づくのも、触れるのも、名を呼ぶのも全て初めてだった。
ずっとしたかった。ずっとずっと。

きっと触れたらあたたかいと思っていた手も、腕も、肩も胸も足も腰も首も頬も額もなにもかも

が。

冷たくて冷たくて冷たくて。


『顔が近いぞ』


そんな声も表情も吐息すらも。


愛しくて恋しくて、ずっと。





「…好き…なのに…。」


こんなこんなこんなこんなこんないきなりなんでなんでなんでどうして





「キョン…くん…。」



ヴーーーヴーーーーヴーーーー


「!」


突然携帯が動き、頭がわずかに動いた。

ああ、閉鎖空間が出現したんだな、と思った。
だがいっそこのまま神が世界を変えてくれたらとも思う。
もう一度彼のいる世界を、彼女なら作り変えられる。きっと。

一部しか動いていない頭は、それでも体を動かすには十分のようで。
僕は携帯を手に取った。


だが、そこには機関の名は書かれていなかった。


長門有希と、そこには書かれていた。



                               To be Continued…



というわけでキョン消失です。ハルヒの力のせいではない消失ですね。
のっけから自分でもえらくハードルをあげてしまった設定ですが;;
考え付いたものはしょうがない。覚悟きめていきましょう。

ここからは困った時の長門さんにお力添えをお願いします。
…たぶん、有希ちゃんならなんとかしてくれる…かな?(おいこら)

すみません。私は死にネタ(もしくはそれに準ずるもの)が大好きです。
……いや、これは違う…と思います。

反省のない管理人でした。


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